昨今、市場環境の変化が激しく、法人営業、個人営業に関係なく、「顧客」との接点やコミュニケーション、そしてニーズが複雑化していると感じています。
私は営業マンの育成にも携わっており、このような環境下に置かれた営業マンたちからは、「なかなか思うように売れない」、「お客様のニーズをどう聞き出せばいいか?」といったご相談、および「商談のプロセスに関する質問」を受けることが増えました。
そこで、私が普段からセミナーなどでお伝えしている、「ソリューション営業育成方法」について、シリーズ形式で紹介していこうと思います。
シリーズを通して、ソリューション営業を成功させるためのノウハウを余すことなくお伝えしていきます。
今よりも成果を出したい営業マンや、質の良い営業マンの育成に困っている営業マネージャーの皆さんの一助となることを願っています。
ソリューション営業とは
そもそも、ソリューション営業とは一体何か、私が独自に分類した営業パターンをもとにお伝えします。
プロダクトアウト型(ものありき) | A)説明営業 | 自社サービスの説明をするのみ。 |
B)提案営業 | 自社サービスに関する課題を営業側で想定し、相手のニーズに関わらず提案する。 | |
マーケットイン型(お困りごと) | C)御用聞き営業 | 相手の要望を聞いてそれに答える。(営業側は消極的) |
D)ソリューション営業 | 相手の課題を聞き、場合によってはその課題が本質的なものか検証する。その後、その代を解決する方法を提案。 | |
人間関係重視型(俗人的) | D)接待・ごますり・べったり | ひたすら濃い人間関係を構築する。 |
ソリューション営業とは、まず相手の課題を聞き、その課題に対する解決策を提示していきます。場合によっては、聞き出した課題が本質的なものかどうか(その課題を解決することで、本当に売上や利益につながるか)を検証する必要もあります。
私のご案内するソリューション営業は、主に法人営業が対象となります。冒頭でお伝えした通り、市場環境の変化が激しい現在、顧客とどう接していくべきか、どのようなコミュニケーションを図るべきか、といったことに悩んでいる法人営業の担当者は多いでしょう。
このコラムでは、そういった人々に対して、役立つ内容を発信していきます。
ちなみに、コラムの内容のレベルとしては、平均的な成績(予算達成イメージ:90〜100%)、もしくは、おおよそ好成績(予算達成イメージ:100〜110%)の営業マン、そして、営業マネージャーを対象として展開していきます。ですが、若手営業マンにも役立つ内容ではありますので、興味がある方はぜひ読み進めてください。
営業における「顕在顧客」と「潜在顧客」
営業における顧客は大きく分けて、「顕在顧客」と「潜在顧客」の2つです。商材によりますが、おおよそ私の肌感覚として、「顕在顧客」は全体の10%程度、「潜在顧客」は全体の60%。残りの30%は、誰が対応しても成約が難しい門前払い対応顧客だと感じています。
簡単に説明しますと、顕在顧客は、誰が営業を行っても成約になりやすい顧客のことをいいます。既に商品やサービス、自社のことを知っていて、興味・関心がある状態だからです。
潜在顧客は自社のサービスに関する課題に気が付いていない、または、その課題の優先度が低いと感じている顧客です。そこは、営業マンの働きかけにより顕在顧客になりうる可能性を持ちます。
近年、インターネットが当たり前の存在になり、ウェブマーケティングや、コンテンツマーケティングなどによって、コストをかけずに顕在顧客にアプローチできるようになりました。
顕在顧客によるアプローチは、人ではなく、ウェブサイトやLP、ウェブ広告などが主流となりつつあります。
一方、潜在顧客に対してウェブだけでアプローチしていくには、まだまだ難しいのが現状です。ウェブに加えて、人が介入することで、潜在顧客に対する契約率はぐっと上がります。
つまり、潜在顧客の成約率を高めることこそが、営業マンとしての価値になるのです。
では、潜在顧客の成約率を高めるには、どのような営業を行えばいいのでしょうか?そこで効果的なのが、「ソリューション営業」となります。
次の項目では、ソリューション営業を行う際に持つべきマインドについてお伝えします。
ソリューション営業において持つべき「課題解決型」マインド
このコラムの方針をお伝えしたところで、改めて、ソリューション営業において必要なマインドやテクニックをお伝えしていきます。
営業マンのマインドは、大きく分けて2つあると考えています。
ひとつは営業マンとして良い成績を出したい、とにかく売りたいという「売りたい型」マインド、もうひとつは、相手の課題を解決したい、人の役に立ちたい、という「課題解決型」マインドです。
営業マンとして良い成績を出したいというマインドは、目線が自分に向いています。相手に必要かどうか関係なく、自分が売って自分の成績を立てたい、という考えのもと営業を行います。
相手の課題を解決したい、人の役に立ちたいというマインドは、相手に困っていることがあって、その困りごとを自社の商品やサービスで解決できることがあれば買ってもらう、使ってもらう、という考えのもと営業を行います。
このマインドを持って営業に取り組んでいると、相手が必要なければ自社の商品やサービスを売らないこともあるでしょう。他社の商品やサービスをすすめる、ということもあるかもしれません。
これらのマインドは価値観の違いによるもので、良い悪いというのはありません。しかし、顧客視点に立ったときに、どちらのマインドを持った営業マンと付き合いたいかというと、言わずもがな後者が選ばれるのではないでしょうか。
(私の長年の経験では、個人向けの営業は「売りたい型」マインドの営業マンが好成績で、法人営業は「課題解決型」マインドの営業マンが好成績の傾向にあると思います。)
営業マンとして良い成績を出したいというマインドは、特に若い営業マンに起こりがちです。成績を上げるために顧客のメリット・デメリットを考えず、とにかく売りたいという欲が出てしまうのです。もしくは、上司やマネージャーに、「目標達成するために四の五の言わず売ってこいと」言われ、強いプレッシャーの元、なんとしても売らなければならない状況に陥っている場合もあるでしょう。
こうして改めて文章で読むと、もしかしたら自分もそうかもしれない、と気づく方も多いのではないでしょうか。大抵の場合、言われるまで気づかないことの方が多いです。
実際にこれまでも、とにかく売りまくる、売れればなんでもいい、という姿勢だけで営業をしている新人営業マンに出会うことが多々ありました。私が指摘することで初めて、彼らはそうだった、と気づくのです。
これを機に、改めて自分がどのようなスタイルで営業をしているか振り返ってみましょう。
営業マネージャーなど、ご自身が教育をする立場であれば、部下や新人に無理難題を押し付けていないか、振り返ってみるといいでしょう。
そもそも企業自体に、誰かの役に立とう、世の中の役に立とう、というマインドがなければ、ソリューション営業はうまくいかないでしょう。
営業で身につけておくべきテクニックやスキル
先ほどもお伝えした通り、「売りたい型」、「課題解決型」どちらのマインドが良い悪いということではありません。根本として、売りたい意欲があることは素晴らしいことです。
売りたい意欲に対して、さらに顧客目線に立った視点を持てるようになったら、より信頼を得られるのです。
意欲があるけど、スキルがないのでどうしたらいいか分からない、という人もいるでしょう。
スキルがない理由のひとつとして考えられるのは、上司や会社から適切な教育を受けていないケースです。何でもかんでも聞くな、背中を見て覚えろ、しのごの言わずに足を動かせ、ということを言われてしまうのです。
高度経済成長期、バブル期はそれでよかったかもしれません。しかし、今は世の中はモノや情報であふれ、個人である程度の判断ができるようになりました。
そのような世の中では、自社のサービスを一方的に説明し、ひたすら売り込む営業方法では、余程の天才でない限り、商品やサービスが売れるはずがありません。
誰でも身につけられる、営業のテクニックやスキルは、大きく分けて2つあります。
ひとつは心理学です。営業で使える、心理学を用いたテクニックとなります。インターネットで「営業心理学」と検索すると、大量の情報が出てきます。中には80種類ほどの心理学テクニックが掲載されているサイトもあります。そんなにたくさんのテクニックは、身に着けるだけで10年くらいは掛かりそうです。私は数種類の心理学テクニックを身に付ければ、大抵の商談はクリアできると思っています。中には、意志さえあれば全く苦労なくに身に付くテクニックもあります。
気をつけていただきたいのが、心理学のテクニックを用いたからといって、営業マンとしてのスキルが一気に上がるわけではありません。これは小手先のテクニックです。
課題解決型を目指すには、相手から重要な情報を引き出す必要があります。相手から悩みや課題を聞き出すことがソリューション営業の本質ですから、それは心理学テクニックではクリアできません。
相手から情報を引き出すためのスキル・マインド・知識が、営業で身につけておくべき2つ目のテクニックとなります。
それぞれの詳しいノウハウは今後のコラムで、より詳しくお伝えしていきます。
2つの営業テクニックを身につけたところで、それらを駆使して営業先企業のビジネスモデルとその課題の分析をすることで、さらに成約率を高めていきます。
営業マンの話を聞いてくれるということは、経営上の悩みを抱えていると考えられます。なぜ売上や利益が上がらないのか?将来に向けた不安は何か?原因を深ぼり、拾い上げることで、相手は納得してくれるだけでなく、信頼してくれるようになります。
掘り下げる分解度が高ければ高いほど、相手経営者が驚くような真の課題を見つけられ、的確な営業のアプローチができるようになるでしょう。
もちろん、ここまでのことは一朝一夕でできるようなことではありません。テクニックを身につけたら、それをどう活用していくか、経験を積む必要があります。
営業は、ゴール(営業としての最終目的、つまり成約、そして紹介)に辿り着くまでに、いくつものプロセスがあります。
ここからは、営業のプロセスを理解し、それぞれのプロセスで何をすべきかを学んでいきましょう。
営業のプロセス
営業の全体のプロセスは以下です。
今回はリアルでの商談のスキルアップに焦点を当てていきますので、「アポ獲得」に関してはまた別の機会でご紹介しようと思います。
アポ獲得をプロセスに組み込んでいる理由は、アポイント獲得の対応に気をつけてほしいということをお伝えしたいからです。
アポイント獲得時の連絡方法ひとつとっても、繰り返しお伝えしている「マインド」によって伝え方がわかってしまうため、注意する必要があります。
契約を取りたい、売上を上げたい、という思考が強い人は、アポイントの段階で余計な発言をしてしまうことがあります。例えば、アポイントの日程打診のメールを送ると同時に自社の商品の紹介をしてしまうと、「それは間に合っている」「以前同様のサービスを聞いたことがある」などと、相手に訪問を断る理由を作ってしまいます。
あくまでアポイントの連絡の目的は、「日程を決める」ということを念頭に置き、感情を先走らせないことが大切です。そのためにも、流れを細分化させ、プロセスごとの目的・意図を定め、それ以外のことは極力しないように淡々と進めていきましょう。
各プロセスのポイントについては、今後のコラムでそれぞれ詳しく紹介していきます。
全体のポイントとしては、各プロセスにおける目的が達成できていない状態で、次のステップには進まないようにするべきです。
今回紹介しているプロセスは、ものづくりの生産工程と同じものだと捉えてください。ものづくりを進める際、前工程が完了していない状態で、次の工程には進みませんよね。
それは、前工程が完了していなければ、次の工程を完了させることもできませんし、最終的な完成へと辿り着けないからというのは誰でも理解できると思います。
営業も同様に、どこかのプロセスを飛ばしてしまったり、雑に進めてしまうと、最終的な完成(クロージング)ができなくなってしまいます。
相手が納得しきっていない状態で勢いで進めてしまうと、クロージングの段階で必死になって商品をアピールしたり、相手に媚を売るようなことをしてしまうため、相手が一気に冷めやすいです。
特に若い営業マンはプロセスを雑に扱いがちなので気をつけましょう。
全てのプロセスを大切に扱うことは、営業だけでなく恋愛でも同じことが言えそうですね(笑)
商談で意識すべきポイント
営業のプロセスを進めていく中で、意識しておくべきポイントがあります。
良いポイントと悪いポイントがありますので、アポ獲得からクロージングまでのプロセスごとに紹介していきます。
アポ獲得時
アポ獲得に関しては、「日程を確定させること」に集中しましょう。電話やメールの目的は、あくまで日程を決めること。できる営業マンは、この段階では余計なことは言いません。
イマイチな営業マンは、ここで自社の商品や、自社の説明をしてしまいます。訪問前に相手に情報を与えすぎてしまうと、かえってアポイントを断るチャンスを与えてしまいます。
自社の商品をアピールしたい、早く契約を獲得したい気持ちもあるかもしれませんが、ここは冷静に、そのプロセスの目的を達成するための行動を淡々と進めましょう。
ただし、「おたくどんな会社なの?」、「どんな商品、サービスなの?」と聞かれた際は、きちんと回答しましょう。ここで回答をしないのはかえって失礼です。
気をつけたいのは、あくまで最低限の情報だけを提供するようにしましょう。オブラートに包めば包むほど、相手は気になって食いついてきます。逆に、全てを開示してしまうと、先ほど伝えた通り、相手に断るチャンスを与えてしまいます。
短い説明で「なんだか面白そうだな」「とりあえず会ってみよう」という興味関心を持たせられるよう、事前に相手の質問を想定して、その回答方法を整理しておきましょう。『段取り八部』、営業マンは準備が何より大事です。
初回営業時
初回営業時は、相手が話題の主体になるように「聞く」ことに徹底しましょう。営業マンの心理としては、自社の紹介や、商品の紹介に時間を割きたくなりますが、それは最低限に抑えましょう。私は初回営業でも自社の紹介を全くせずに、いきなり相手の課題のヒアリングに入ることもあります。
相手の課題やニーズがわからないうちに、無理やり商品を勧めてもかえって煙たがられ、成約は遠のくばかりです。
最初に相手の情報(主に経営課題)をたくさん集めた方が、相手への提案内容が明確になるので、その後のプロセスで有利に商談を進めていけます。
相手の方がたくさん話せるように、話を引き出すテクニックを身につけ、活用しましょう。
自社サービスの説明
自社サービスの説明は、このサービスはこういう特徴があるから良いんですよ、や、私たちはこう思っているからおすすめですよ、などといった、主観的な説明に頼らず、客観的な説明も盛り込みましょう。
客観的な説明というのは、「事例」です。ウィンザー効果といって、第三者の意見というのは相手に非常に刺さりやすいです。口コミなどはまさにウィンザー効果を活用したマーケティングですよね。
私たちがこう思っています、ではなく、クライアントがこう言っています、ということを伝えることで説得力を持って商談を進めていけます。
売れる営業マンは事例の引き出しが豊富。自信を持ってそうだと言い切れます。
商談全般、相手の懸念や疑問
商談を進めていく中で大切なのは、いかに相手の懸念や疑問を早く引き出すか、ということです。
どんな優秀な営業マンでも、何の壁もなく成約に至ったという商談は極めて少ないでしょう。どこかのタイミングで相手が懸念や疑問を抱く瞬間は必ずあります。そして、未熟な営業マンほど、それらの瞬間がくることを恐れています。断られてしまうのが怖くて、懸念や疑問を聞かないようにしてしまうのです。
しかし、懸念や疑問点を放置してしまうと、クロージングの時にそれが原因で、相手に契約を断られる可能性を増やすことになります。
早い段階で相手が抱いている懸念や疑問を全て引き出し、それらを解消するために行動することが重要です。
相手の懸念や疑念をクリアにした状態で、クロージングに望むようにしましょう。
できる営業マンは、相手の懸念や疑問に対してすぐに切り返せます。豊富な経験、または事前準備により、相手から出てくるであろう疑問や懸念を想定できています。なので、それに対する回答を持っています。懸念や疑問を怖がることなく、むしろクロージングに近づくチャンスと考えています。
根拠を持って論理的に相手の懸念や疑問を切り返せると、そこから一気に成約へとつなげることもできるでしょう。
イマイチな営業マンは、相手の疑問に対する回答すらできないことが多いのです。
懸念や疑問が出てくるのが怖いので、それを避け、成約から遠のいてしまう環境を自ら作ってしまう傾向にあります。
価格提示
価格に関しては、相手から聞かれるまで言わないようにしましょう。そもそも商品やサービスに対して興味がない人に値段を言っても意味がありません。
金額はどのくらいなの?と言わせることで、相手が興味を持っているかどうかも確認できます。相手が値段に対してどのくらい食いついているかも、クロージングへ進める際のバロメーターとなりますので、注意深く相手の反応を伺いましょう。
クロージング①
テストクロージングとは、相手の商品に対する興味関心を確認する行為です。イマイチな営業マンは、商談末期のいわゆるクロージングの段階になったら、いきなり、買うか買わないかの選択を迫ります。
この方法が悪手であることは、自分自身を買う立場に置き換えたらすぐにわかると思います。
例えば、あなたはお気に入りの店で、新しい洋服を買おうか悩んでいます。すると、店員さんが近づいてきて、その商品の特徴やおすすめポイントを話してくれました。ひととおり話を聞いて、改めて検討をしようとしているあなたに対して、店員さんは、「買いますか、買いませんか、どうしますか?」と聞いてきました。果たして、あなたはその商品を購入するでしょうか?・・・答えは明白ですね。
あくまで自分が決めて購入した、と思わせ、気づかれないように相手を誘導することが、クロージングでは大切なのです。
そのために、できる営業マンは、商談のプロセスの中で、小さいクロージングをいくつも作っていき、少しずつ相手の心理状態を確認しながら商談を重ねていきます。
テストクロージングに関してはスキルが必要なので、今後のコラムで詳しくお伝えしていきます。
クロージング②
クロージング②は、明日からできるマインドの問題です。
クロージング①でお伝えした通り、買うか買わないかは、あくまで相手に決定権があるということを理解しておくことが重要です。イマイチな営業マンは、買うか買わないかを自分でコントロールしようとしてしまいがちですが、最終的な決定権を持っているのは、当然相手側です。
できる営業マンは、クロージングまでのプロセスを自分のコントロール下において、最終的な決定権は相手に委ねます。相手がこの商品を買うべきか?買わないべきか?を正当に判断するため、有益な情報を提供し続けることが、営業マンの本当の役割なのです。
それでは、商談で意識すべき点を、改めて整理しましょう。全体を通して、以下の6つのポイントを押さえておくことが重要です。
- 後出しじゃんけん
- 他者の影響力を使う
- 懸念、疑問の風船を膨らませない
- 徐々にクロージングする
- 買う、買わないの決定以外の商談をコントロールする
- 理論を用いて感情に訴える
後出しじゃんけんというのは、自分から情報を先出しにしないということです。多くの営業マンは、自社のサービスや商品の情報を、最初から全て出そうとしてしまいます。
そうではなく、まずは相手から情報を引き出し、それらを解消することができるのが自社のサービスや商品である、という見せ方をすることで、提案が的を得やすくなり、さらに相手に良い印象を与えながら商談を進めていけます。
また、最初に情報を与え過ぎてしまうと、余程特徴のある商品でない限り、相手に断る材料を提供することになりやすいです。最低限の情報を提示した後は、相手の課題・不安・悩みに早めにアプローチするようにしましょう。
他者の影響力を使うというのは、「自社サービスの説明」でお伝えした内容となります。自社の視点からの意見ではなく、他者の視点からの意見=事例をみせることで、情報の信ぴょう性を高めましょう、ということです。
懸念、疑問の風船を膨らませないということも、「相手の懸念や疑問」でお伝えした内容です。相手に断られかねない要素は、早めに吸い上げて解消していく必要があります。
懸念、疑問を放置しておいて、それが膨張して「懸念と疑問の風船」が爆発してしまったら、商談は終了となってしまいます。
徐々にクロージングする、買う、買わないの決定以外の商談をコントロールする、ということも、「クロージング」でお伝えした通りです。
理論を用いて感情に訴えるというのは、その商品の有効性は理論で判断することが多いですが、
人が最終的に購入を判断するのは感情によるということです。素晴らしい理論で商談を進めて行きながら、相手から「どうもこの営業マンは性に合わない」「何となく今は買いたくない」という感情的理由で不成約になることは珍しくありません。
ほとんどの経営者は、理論・理屈に基づいてビジネスの良し悪しを判断をします。とはいえ、経営者も人間なので、時に感情が大きく影響することもあります。例えば、ちょっとしたメールの文章が失礼だった、言葉遣いが気に食わなかったという理由で、それまで順調だった商談が破談になってしまうこともあるのです。
いくら完璧な理論で商談をコントロールできたとしても、感情で相手に拒否されるのは大きな損失です。相手に嫌な思いをさせない、という感情のプロセスをコントロールすることも重要です。
まとめ
今回のコラムは、ソリューション営業のノウハウを学ぶために、最低限押さえてほしい基礎知識を紹介しました。
営業のプロセスや意識すべきポイントを紹介しましたが、一番は、営業マンとしてのマインドをしっかりもつことが大切です。自分の意思に基づいた強いマインドを持っていれば、自ずとスキルやテクニックは身に付いていきます。
しかし、中長期で活躍する営業マンになるためには、根幹に「売りたい型」マインドだけでなく、「課題解決型」マインドを持つことが必要と私は感じます。
私自身も会社を経営していますので、営業を受けることがあります。すると、多くの営業マンが「売りたい型」マインドで営業をしてきます。一方的に自社商品について説明され、どうですか?と聞かれても、自社にとって良いのか悪いのかよくわからない。そこまで必要と思わない、と感じることがほとんどです。
ただ商品を売るのではなく、相手の課題やニーズを聞き、解決策を提案する流れで自社商品を説明してくれる方が、単純に興味・関心を持ちやすいです。人は、自分に興味を持ってくれる人に対して、興味を持つものです。「人」に対して商談をするということを念頭に置いておけば、どのようなマインドで営業をすべきかが明確になってくるでしょう。
次回からは、営業のプロセスに沿って、細かなコツやテクニックをお伝えしていきます。
より実践的な内容になっていきますので、ぜひ楽しみにしていてください。
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