営業コラム Vol.002 「営業の初回訪問の流れ|“事前準備”の重要性とコツ」

前回、営業の成約率を高めるために必要な考え方や、営業の全体の流れについてお話ししました。
今回からは、営業の一つひとつの流れに注目し、それぞれのポイントを解説していきます。

営業の流れはアポ獲得から始まります。ただ、このシリーズでは商談の成約率を高めることがテーマであるため、今回はアポ獲得の要素についての説明は割愛します。

アポを獲得したら、次の流れは初回訪問になります。初回訪問の結果によってその後の商談の流れが左右されるため、非常に重要なプロセスです。
今回は、初回訪問の全体の流れについて紹介しつつ、初回訪問において最も重要な「事前準備」について解説していきます。

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初回訪問の流れ

まずは、初回訪問の流れを分解してみましょう。大きく分けて、訪問前、訪問時、訪問後の3つに分けることができます。

「訪問前」にやること

  • 事前準備

「訪問時」にやること

  • アイスブレイク
  • 自己紹介・自社紹介
  • ヒアリング(訪問先の相手と意見交換し、そこで生まれた課題について議論し、課題の本質を見つける)
  • 商談クロージング(次回アポの設定)

「訪問後」にやること

  • お礼メール(当日もしくは、翌日までに送る)

上記が一般的な初回訪問の流れになります。この工程の中でも、特に事前準備は重要になります。
それでは、事前準備について詳しく解説していきます。

 

事前準備について

事前準備は、初回訪問の中でも欠かせない項目です。
当たり前ですが、初回訪問をするまで、お互いのことを知らないわけです。
訪問される側が私たちを知らないことは問題ありませんが、私たちが訪問する側を知らないまま企業を訪れてしまっては、商談を有利に進めていくことは難しくなります。
相手の企業と信頼関係を築くことや、真の課題を見つけ出すためには、事前準備をしっかり行い、初回訪問に臨みましょう。

仕事の良い進め方として、「段取り八分仕事二分」という言葉がありますが、商談も同様です。8割は準備にかかっているといっても過言ではないと、私は考えています。
前回の記事で解説した、潜在顧客を顕在顧客にしていくためには、まずは潜在顧客、つまり商談相手について理解することが重要です。そのために事前準備が必要になるのです。

前回の記事でもお伝えしたように、よくいる営業マンに、自社や自社サービスをひたすらアピールしてしまう人が一定数います。そのような人は事前準備が不十分であることが多いです。

ここまで読んで、自分はちゃんと事前準備しているな、と思った方も多いでしょう。
では、みなさんは普段、どのような事前準備を行っていますか?
例えば、いつも使っている資料を用意する、訪問先の企業のウェブサイトにざっと目を通す、などではありませんか?

もちろん、何もしないよりはいいですが、さらにそこから一歩踏み込むことが大切です。
それは、ウェブサイトをみた上で、企業に対して考察を行うのです。

相手企業の課題を拾い上げることは、誰がやっても難しいことです。
初めて会った相手企業の本質的な課題を拾い上げるのは、尚更難しいことで、それ相応の準備が必要となります。

しっかりと初回訪問の目的を達成するために、事前準備を行なっていきましょう。

 

事前準備でおさえておきたいポイント

01. ビジネスモデルについて知る

まずは、訪問先の企業のビジネスモデルについて調査しましょう。誰に対して、何を、どのくらいの価格で売っているのか、これを洗い出すことで、ざっくりとしたビジネスモデルを理解できます。

例えば、飲食店と一口にいっても、牛丼や立ち食い蕎麦など、一般層に対して、早く安く食を提供しているところもあれば、高級レストランのように、ハイスペック層に対して、食事だけでなく雰囲気やサービスを提供しているところもあります。
両者はターゲットも異なりますし、単価も異なります。つまり、ビジネスモデルも全く違うものになりますね。

このように同じ業種であっても、ビジネスモデルの違いによって特徴が変わるのです。それを知ることが大切です。

02. 課題の想定

次に、調査したビジネスモデルで発生しうる課題について想定しましょう。課題は、自社が売りたい商品やサービスに紐付くものを想定していきます。

例えば、人材紹介会社の営業マンが、高級レストランへアプローチをかけるのであれば、アルバイトをたくさん集めるよりも、メニュー開発ができる調理人や、ハイスペックなサービスができる社員を集めることの課題や、課題に対する解決策を考える必要があります。
居酒屋や牛丼屋へアプローチをかけるのであれば、アルバイトをたくさん集めることが課題になるでしょう。

相手のビジネスモデルにあった課題を見つけ、その課題が自社の商品やサービスに紐付けば、相手企業が抱えているであろう課題に対する、解決策を提案することができるようになります

03. 課題に対する解決策の策定

想定しうる課題の洗い出しが終わったら、課題に対する解決策を考えていきましょう
とはいえ、想定で考えた解決策を提示するだけでは、相手は納得しません。そこで重要なのが、「事例」になります

例えば、居酒屋を経営している企業が、アルバイトの採用に関して課題を抱えているとします。そこに対して、「自社の媒体に求人広告を掲載したらアルバイトはたくさん集まりますよ」、と言ったところで、相手からしたら「本当かな?」と疑問に思うわけです。
もしくは、すでに他の媒体を使っていた場合は、「媒体に広告を出しても満足する人材はなかなか集まらないのに」などと、疑念が生じるでしょう。
「自社の商品やサービスを使ったらうまくいくよ」、というだけでは、説得力に欠けますね。

そこで、第三者の「事例」が必要になります。同じ業種業態の他社は、これだけの数値でこれだけの結果が出てますよ、など、根拠のあるデータを含んだ事例を提示することで、説得力が生まれます。
データが出せない場合であっても、「御社と同じ規模、または業態の会社が、当社のサービスを使ってこのような課題を解決しました」といった“他社・他人の声”はとても重要です。

また、「反対問答」の準備もしておくと良いでしょう。それって本当なの?や、他のサービスを使ったのにうまくいかなかったよ、など、相手から拒否反応を示されることがあります。
その際に、相手の拒否反応に対して理論的に解答をすることで、相手から信頼してもらいやすくなります。

相手からの疑問や懸念を解決することができれば、それは信用へと変わっていきます。
「本当に解決できるのか?」と聞かれた時に、「そういった懸念はよく質問されます、けれど私たちはその課題に対してこういうふうに解決してきた事例があるんです」、など、その場で相手が納得できるような、客観的かつ理論的な話ができれば、「この人はわかっているな」、「この人に頼めばいいんだな」、という信頼へつながっていきます。

この流れが生み出せると、一気に逆転できる状態に持ってこれるようになります。
辿々しく答えてしまったり、一度持ち帰って調べます、となると、大丈夫かな?という気持ちが生まれてしまうのは、皆さんも想定できるのではないでしょうか。

前回のコラムでお伝えした通り、営業時に売りたい売りたい、という気持ちだけを押し出しても、信憑性がありません
また、ただ資料を見せてその内容を説明するだけでも、相手はそれが自社の課題を解決するのかどうか、というのは判断できません。
事例も含めて、こういった理由で課題解決ができますよ、と、相手の懸念に対して即答できるような反対問答を準備しておきましょう。

営業準備は、最初のうちはものすごく時間がかかるでしょう。私が営業の教育支援を行なった会社の若手営業マンは、最初は準備に1時間以上かけて行なっていました。
けれど、経験を重ねればある程度パターンは見えてきます。最終的に彼らは、10分程度で準備ができるようになっていました。
私のように何十年も営業の仕事をしていると、アポ先の企業に向かう移動中に準備ができるようになっていきます。

余談ですが、本来、営業職のマネージャーは、部下の営業準備のチェックを行うべきだと私は考えています。
ところが実際は、マネージャー自身も営業準備をきちんとやらない、もしくはやれない人が多いのが現実です。しのごの言わずいってこい、とりあえずやってみろ、という指導では、売りたい意識が強いだけの営業マンになってしまいます。

事例や反対問答は、一度作ってしまえば会社全体へ共有することができます。ビジネスモデルや課題の選定というのは知識が必要なので、鍛錬が求められます。
1時間かけてやったことが10分で済むようになる、ということをマネジャーが教育できると理想的ですね。

商材によっては、営業準備をするよりも、とにかく電話をかけてアポイントメントを取ることを方針として打ち立てている企業もあるでしょう。
ただ、そういった場合も営業準備はやったほうが、成約率が圧倒的に上がると思います

 

ビジネスモデルや課題の選定に役立つ「有価証券報告書」

相手のビジネスモデルを想定して課題を選定するということは、一朝一夕でできることではありません。しかし、経験がない営業マンでもできる方法があります。

それは何かというと、上場会社へ営業に行くことです。
実は、上場会社は非常に営業準備がしやすいです。なぜかというと、上場会社は自社の情報を公開しないといけない決まりがあります。
有価証券報告書を筆頭に、自社のビジネスモデルや、課題について詳細に記載されているのです。そのため、相手へイチからヒアリングする必要がなく、深掘りする必要もないのです。

とはいえ、上場企業のアポは簡単に取れるものではなく、ほとんどの営業マンは中小企業を中心に営業活動を行っています
中小企業の場合は、上場企業のように情報を開示しなければならない決まりはありません。ウェブサイトを見たところで、わかることはせいぜい会社概要や事業内容くらいのもので、課題はもちろん業界の中の立ち位置というのもよくわかりません。

ではどうしたらいいのかというと、初回訪問先の企業と同業の、上場会社の有価証券報告書を見ればいいのです。そうすることで、業界の課題や傾向をある程度想定できるはずです

たとえば、A社という企業と同じ業種業態の、上場会社の有価証券報告書を読んで課題を抽出してみます。規模は違うのでイコールではないかもしれませんが、相手に対して、「御社はこのような課題をお持ちではありませんか?」と話を振ることができるようになります。
たとえ抱えている課題が違ったとしても、そこから話が広がり、相手の真の課題を見つけることにつながる可能性が高くなります。
また、この営業マンはよく調べてきているな、と感じてもらえるだけでも信頼獲得につながります。

有価証券報告書という言葉を見るだけで頭が痛くなるかもしれませんが、日本語が読める人であればわかる内容が記載されています。最初の10〜15ページくらいを読み込めば、商談に必要な要素はつかめます。

そもそも、その企業のポイントがわかるように書かれたものが有価証券報告書なので、字面だけで倦厭する必要はないと、私は思っています。
私の支援先の若手女性営業マンも、最初はとっつきにくそうにしていましたが、数社分読み込むうちに使いこなせるようになりました。

営業活動のためだけでなく、業界調査などにも役立ちますので、一度、興味がある企業の有価証券報告書を見てみるといいでしょう。

 

まとめ

今回は初回訪問において重要なプロセスである、事前準備について解説しました。
事前準備を紐解くと非常に奥が深く、なかなか大変に感じた方もいたのではないでしょうか。しかし、ここまで徹底して取り組むことで、初回訪問で次につながる結果を生み出すことができるようになります

最初のうちは時間も手間もかかり大変かもしれませんが、経験を積み重ねていくこと、そして自分の中で型が見えると、一気にスピードも質も向上します
自分自身の知識の定着にもつながりますので、普段なんとなく事前準備をしている方は、ぜひ真剣に取り組んでみてください。

「自社の商品を説明するだけ」の営業マンと、「相手のビジネスモデル、課題を想定し、それを元に相手にじっくりヒアリングを行い、その場で課題解決策(事例・反対問答含む)についてディスカッションできる」営業マンと、どちらが“デキる営業マンになるか”は想像に難くないでしょう

次回は訪問時に取り組みたい、「アイスブレイク」について解説します。
アイスブレイクは、当日の訪問で良い流れを生む重要なポイントでもありますので、みなさんにも身につけてほしいと思っています。ぜひ楽しみにしていてください。

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